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染色された歯の面を数える「日本のPCR」

Abstract

Plaque controll record (PCR) is easy method to meassure the rate of tooth surface attached plaque. PCR was proposed by O'Leary 1). PCR is also used in Japan. But, O'Leary's PCR and Japanese PCR is not same. O'Leary's PCR counts the number of plaque attaching surfaces. Japanese PCR counts the number of colored surfaces. Therefore, Japanese PCR score becomes very large than O'Leary's PCR. In recent years, the proportion of people engaged in dental services in Japan has become very large. But, the number of patient is decrease. This means a down in the income of those engaged in dental service. It is necessary to show that the condition of the teeth is worse than the actual condition to get high medical expenses.

PCR (Plaque control record:プラークコントロールレコード、以下、PCRと略称)とは、色素で歯垢を赤く染めて、歯垢のついている割合を数値化する方法のことです。歯科医院で実施され、歯磨きのチェックに使われます。しかし、これが、日本では歯垢のチェックに使われていない現実を報告しておきます。 本来、歯垢のチェックである PCR が、日本では違う方法で行われています。そこで、この両者を区別するために日本で行われている方法を「日本のPCR」と表記して区別します。

私のPCRの経験を下表にまとめましたので、まずは、これをご覧ください。

時期 1回目 2回目(6か月後) 3回目(1回目より7か月後)
事前の歯磨き PCRされると思っていなかったので、5分ほど歯磨き粉をつけずに、メールをチェックしながらのながら磨き をした。 PCRされると分かっていたので、歯磨き粉をつけて2回、マウスウオッシュ液をつけて一回歯磨きした。糸ようじで2回歯間を清掃した。約1時間 歯磨きしていた。その後、鏡で見える範囲では、歯垢が無いことを確認し、歯科医院へ。 前回の教訓を踏まえ、歯磨き粉をつけずに、少し隙間を意識して約10分間の歯磨き。鏡で見える範囲では、歯垢が無いことを確認し、歯科医院へ。
術者 Aさん Bさん Bさん
染色後の洗口 くちゅくちゅと軽めに3回 歯科衛生士の指示で口に含む程度で軽く2回 たっぷりと口に水を含み入念に3回
PCRスコア 33% 58% 16%

忙しい方のために、最初に結論を書いておきます。

1. 「日本のPCR」は、歯垢をチェックしているのではなく、染色された歯の側面の数をカウントしている

2. 歯垢ではなく歯の染色部のカウントであるがゆえに、(もし、歯垢がほとんどない場合、)結果は洗口の回数と度合いに強く依存する

3. 「日本のPCR」検査前の歯磨きは、研磨剤や界面活性剤など歯の表面を(過度に)清浄にする成分を含む歯磨き粉やマウスウオッシュ剤を使うと、染色剤の付着が多くなる ため、数値が悪化する。

PCRの結果がおおむね 20% を超えると、歯磨き指導と称して、小学生に指導するような口調で、歯科衛生士がわかりきった歯ブラシの使い方を説明し、場合によっては歯ブラシを購入させられます。これは、料金として加算され、さらに 歯磨き指導は月一回に限り健康保険が適用されますので、日本の健康保険財政を圧迫します。

表の少し詳しい説明

 1回目は、PCRは初めてでした。不良であることに不満はありましたが、これは受け入れるしか無いと思いました。それで、2回目は、歯垢がほとんど付着していないように入念に清掃してから臨みました。但し、一か所だけブラッシングしていなかったポイントがあります。一か月前に、手術した痕です。ここは、掻き壊すのが怖くてブラッシングできませんでした。 しかし、これによるスコアの上昇は4%以下にとどまります。結果は、無残な58%。この時に3つのことを確信しました。すなわち、

1) 洗口が不十分で、染色剤が残った。
2) 歯の表面が歯磨き粉やマウスウォッシュ液に含まれる界面活性剤で清浄になり、染色剤が強く付着したことが予想された。
3) 鏡で見える範囲で歯垢がほとんどついていなかったのであるから、この検査は歯垢ではなく染色部分をカウントしている。

 いつもやっていることを、上から目線でこうやるんですよと歯磨き指導をされました。さらに、磨けていないからという理由で、1か月後に予約をさせらました。 これらは時間の無駄であり、不愉快でもあります。抗論しようにも、何をカウントしているかわかりませんから、こちらは何ら客観的事実をつかんでいないのです。こういう無駄なことを避けるには、着色部位を減らすしかありません。そこで、3回目に備えて、上の3つの仮説から、以下のような作戦を立てました。

1) この1か月間は、歯磨き粉、マウスウォッシュを使わない。直前の歯磨きも同様に、歯磨き粉などを使わなかった。
2) 表にある通り、洗口は、口にたっぷりと水を含み、入念に3回行った。

結果は、16% となりました。PCRの原著論文では 10% 以下を目標とされていますが、日本で行われているやり方では、この辺りの数値が限界だと思います。歯磨き粉を使わなかったのは、接着剤の使い方と同じ理屈です。接着剤を使うときは、接着面をなるべく清浄にします。染料も同じ理屈で清浄でないと付着しません。ろうけつ染めという染色技法がありますが、布にろうが付着していると染料が弾かれます。それと同じ理屈で、歯の表面に油分が残る方法を選択しました。さらさらの油でも塗布しておくと さらに染色剤を弾いたかもしれません。

いずれにしても、「日本のPCR」スコアは洗口の回数と度合いに強く依存し、歯磨きには依存しないことは明白です。ここで、洗口でプラークが落ちるのではないかという思う方もいるでしょう。実は、洗口だけでプラークが若干落ちるという洗口液はあります。しかしながら、そのようなものがあることを認めたら、この歯磨き指導は、その根拠を失います。世の中には 、年金問題のように、黒いものを白だと言い張り、それがまかり通るような似たような話がたくさんあります。結果として、現在のところ、洗口ではプラークは落ちないということになっています。
いずれにしても、歯科衛生士が歯垢をカウントしてくれれば、このような姑息な手段を取らなくても良かったのです。このやるせなさが、この一文を起こすきっかけになりました。
 

O'Leary's PCR

O'Leary らが提唱した PCR 1) と、日本で行われている PCR は異なるというのが私の見解です。そのため、ここでは、O'Leary らが提唱した方法を単に PCR、日本で行われている上記のような PCR を「日本の PCR 」と区別して書きます。これは、(指導的な)歯科衛生士が、業界紙やネットなどに挙げている 「日本のPCR」の説明、歯科材料メーカーの歯垢染色剤の説明書と成分、知人の歯科衛生士の聞き取り調査などを総合して判断しました。

O'Leary らは、論文 1) の中で下記のように書いています。

"患者が口をすすいだ後、オペレータは、エクスプローラーまたはプローブ(探針器具)を使い、歯と歯肉の接合部での染色された柔らかい蓄積(歯垢)を調べる。歯垢が見つかった場合は、記録する。 歯と歯肉の接合部に柔らかい蓄積がない面は記録しない。"

ここで、重要なポイントが2つあります。このことは、PCRと「日本のPCR」の違いを理解するうえで重要です。
 1. 注目すべき部位を、歯と歯肉の接合部に限定していること。
 2. 染色部をカウントするのではなく、探針を用いて、染色部分に歯垢があることを確認すること。
 

「日本のPCR」の現状

前にも書いたように、「日本のPCR」は、多くの場合、染色部をカウントしています。
森山らの論文 2) は、極めて象徴的です。この論文は、データ収集や解析の稚拙さから考えて、学生の卒業論文に近いレベルと思われます。私は、この論文に著者とは異なる疑問と結論を見出しました。

1) 表1および3において、歯磨きにおいては指導者たるはずの歯科医の歯磨き後の PCR 値がこのように高いのは、違和感を感じます。
2) 著者らは、従来の判断基準による結果(表1)と比較し、新たに厳格な判断基準を適用することによって、術者間の差が減少したとしています。しかし、厳格基準によるデータ(表3)は、全員が、 50-80% の極めて不良な値かつ狭い範囲内にあり、被験者の差も出ていません。このたった30%の間で、術者間の差が18%あるので、データのばらつきとしては、60%近くなります。これは、もはや検査方法としての体をなしていません。

 つまり、「日本のPCR」は、どんなにいじろうと、数値が高く出て、誤差は±20%を優に超え、検査方法として不適切であるということが出来ます。
 このように数値が大きめに出るということは、別の問題があるかもしれません。もし、仮にこの論文に書かれているように歯垢をチェックしていると主張されるのであれば、「日本のPCR」は、というか日本の歯科医師や歯科衛生士は、歯垢と染料自体の粘りとの見分けがつかないということなのでしょうか。

ネット上に散見される「日本のPCR」、すなわち歯垢ではなく染色部位をカウントするやり方はいくらでも見つかります。ある歯科医はこう述べています。

"測定者が染め出しされた部位を用紙に記載してその数を数えます。 はっきりしない所は探針でとれる部位だけプラークとみなします。"

歯科衛生士 国家試験対策D 7)
"1 歯を 4 歯面(頰側,舌側,近心,遠心)に分け染色された歯頸部の歯面数をカウントする."

また、歯科医の質問コーナーでは、回答したすべての歯科医がばらつきが多い検査方法であると書いています 6) 。

結局のところ、日本の歯科医や歯科衛生士を養成しているところが使っている教科書を書いた人は、O'Leary の原著論文を読んでいないことが推定され、結果として、歯垢をカウントしていないと考えられるということです。

何度も書きますが、「日本のPCR」は、歯の表面を界面活性剤などで清浄にすればするほど、染色後の洗口を不十分に行うほど、カウントの数値が上がります。 歯垢を見ていなければそうなります。
 

歯垢染色剤の問題

日本で使われている PCR 用び歯垢染色剤、例えば、Butler Red Cotes などには染料以外に粘性を増すプロピレングリコールなどが基材として使われています。 塗布した後、付着力を増すために乾かせといった記述も見られますが、乾かせば水分は飛びますが、プロピレングリコールは残ります。経験の浅い歯科衛生士は、このプロピレングリコールの粘性を歯垢と 誤認している可能性もあります。O'Leary の論文では、このようなものを使って付着力を増加させろとは書いて ありません。

PCR 用染色剤で使われている色素には大変な問題があります。多くの場合、食品添加物である食用赤色104号(以下、R104)が使われています。メーカーは食用色素だから安全と喧伝しています。R104 そのものの毒性は、参考文献4) に詳しく述べられています。 R104 は、ベンゼン環3つが結合したような分子構造になっています。一般に、人工的に作られたベンゼン環を持つ構造は人体に良くないことが多いので、なるべく避けるべき物質の一つと私は考えます。 しかし、R104 の安全性は、食品添加物としての使用量および方法であれば、度重なる安全性試験において充分に安全が確認されていると言えます。

しかしながら、製造工程でヘキサクロロベンゼンが混入することが知られて おり、これが最終製品に残ります。このヘキサクロロベンゼンの1日許容摂取量は、国際化学物質安全性計画(IPCS」)における発がん性投与量TD5でみると、0.16μg/kg体重/日です 3) 。極めて発がん性の高い物質の一つと言えるでしょう。食品に使う場合、1日の摂取量はこの量の約1万分の一となり、ほぼ問題とはなりません。

注意すべきは、R104およびその不純物の許容摂取量は、高濃度の液体を粘膜に直接塗布した場合の指標ではないということです。例えば、一般家庭で使われる醤油は、飲んでも問題になりませんが、一滴を皮膚につけて太陽光の下で1時間も置いておけば皮膚は炎症を起こします。このように、 高濃度で体表面に長くとどまった場合と、飲食した場合とでは、危険性が全く異なります。しかも、こうした色素は、有機物に良く付着するから工業的に使えるのであって、結果的に口腔内に長くとどまります。 特にR104のようなタール色素は、歯よりも口腔内の粘膜に強く付着します。よって、日本の PCR 検査を受ければ、ほぼ半日以上、口の中は真っ赤です。歯科医院に行った後に、人前でしゃべるような業務であれば、ちょっと恥ずかしいことになります。このように、口腔内 が長時間暴露した場合の危険性は評価されていません。

また、R104 は口紅などの化粧品としても使われています。だから皮膚や粘膜でも安全というわけではありません。化粧品の場合、こうした危険性がある物質は、なるべく皮膚への直接接触や浸透を防ぐノウハウがあります。たとえば、口紅 やアイシャドーはクレンジングで落とすことが出来ますが、PCR用染色剤はこの方法では落とせません。

題意から外れますが、化粧品にとって、こうした色素や紫外線防止材料などの毒性は、いつでも大きな課題です。それゆえに、化粧品メーカーは非常に慎重に検証実験を行っています。化粧品は、使用によって健康被害があってはならないというのが原則です。それに対し医薬品は、重篤な副作用があっても、それを上回る効果があれば ok という世界です。つまり、使っても問題が無いように考えているのが化粧品、なるべく使わないほうが良いのが医薬品です。両者には大きな差があります。

アマゾンなどの通販サイトで、こうした歯垢染色剤の評を見ると、子供に毎日使用しているといった書き込みが散見されます。おそらく、メーカーですら、毎日という使い方は想定しておりません。歯磨きで歯垢が残ったからといって、直ちに寿命に影響するわけではありません。しかし、 ヘキサクロロベンゼンの暴露で発生の可能性が高くなる可能性がある口腔内の癌の予後は、極めて不良です。なるべくそのリスクを避けたほうが良いと思います。
 

なぜ、「日本のPCR」は行われるか

少子高齢化と歯磨き指導の浸透に伴い、歯科医院の患者数が減少しました。それを踏まえて、新たな顧客層としてシニア層がターゲットになりました。このことは厚生労働省の指針としても出されています。 歯科医院向けの経営コンサルタントの資料にも、シニア層をターゲットにした予防歯科や自費治療を積極的に勧めることが述べられています。本来の主旨として、シニア層の歯が守られれば、医療費も減少するでしょうし、シニア層も質の高い生活を送れるでしょう 。しかし、ここまで見てきたように、このことが商業主義的に拡大された感があります。実際、予防歯科の粗利益は、80% にもなります。これは治療よりも高いのです 5) 。結果的に、歯垢をチェックしない「日本のPCR」が行われるようになったと も考えられます。
 

この一文を起こすきっかけになった出来事

上表の3回目のとき、やればできるみたいな神経を逆なですることを言われたので、スイッチが入ってしまいました。仮説の検証は十分に満足できるものであったので、何も言わずに帰るつもりだったのです。

「2回目は、歯磨き粉を使って2回、マウスウオッシュを使って1回磨き、糸ようじも使って磨きました。行く前に鏡で歯垢が無いことも確認してきました。それで 58% でした。今回は、歯磨き粉を使わず10分ほど普通に磨いてきました。軽く磨いたほうが格段に成績が良いということは、歯は丁寧に磨かないほうが良いということでしょうか? 
私は、どうしたらよいのかわからないので教えてください。」

答えられるはずがない、意地悪な質問です。 しかも、術者は2回目と同じです。それで、

「個人差ではなく、術者が同じでも、58%と16%と結果がばらつくということでしょうか? PCR は、40% も誤差が出る方法なのでしょうか。」

と畳みかけました。日本のPCRは、ばらつきが多い検査方法であることは、論文2) で把握済みです。
しかしながら、この問いに歯科衛生士は、否定してきました。そして、染色部分をカウントしたので間違いようがないと言ったのです。つまり、O'Leary の方法ではないと言ったのです。これに関して、O'Leary の論文の記述を紹介したところ、歯科衛生士は前言を撤回しましたが、2回目において、歯垢が無いことを事前に確認していますので、そうであったとしても歯垢がチェックできていないことになります。 もちろん、2回目の時に、歯に当たるプローブの動きで、歯垢をチェックせずに染色部分をカウントしたことを私は確信していました。ですので、3回目に書いたような対策を実行したのです。 そして、すべての仮説は見事にその通りになりました。

歯磨きの方法が変わったのではと言われたので、ここ10年間変えていないと申し上げました。これは事実です。
歯科衛生士の方が、何も言えなくなったので、

「これらの結果を考えると、このチェックは私にとっては歯磨きの方法をチェックするものではないということですよね? ならば、無駄ですので、今後行わないようにお願いします。」

といったら、歯科医院の方針でというので、

「でしたら、歯科医院を変えるしかないですね。」

と切り返したら、医院長が飛んできました。

「おそらく、一か月に前にきれいにしたから、軽い歯磨きでも汚れが落ちたのでしょう。」

と言われました。もし、そうであるとすれば、数年何もしなかった1回目に 33% であった説明が付きません。さらに、この検査は、歯の状態をチェックしていることになり、歯磨き方法をチェックするものではないということになります。そうならば、 「日本のPCR」の結果によって、磨けていないからと歯ブラシ指導をするのは理屈に合いません。
ここで白黒の決着をつけても意味がありません。私自身も、意味もなく相手を追い込んだことを後悔するだけです。
そこで、私のわがままで、この検査は受けたくないということにさせていただきました。
これ以上の議論は、他の患者の迷惑になるのでやめました。
 

PCR対策の歯磨き

PCR のために歯磨き方法を変えるなど、笑止千万なことですが、狸の化かしあいのような上記のようなことを確実に避けるには、このようなタイトルをつけたくもなります。

O'Leary が問題にしている、あるいは歯周病の原因となる歯垢は、歯頚部すなわち歯と歯ぐきの境目にある歯垢であるといえます。実は、この部分の歯垢の除去は学校で習ったようなブラッシングでは取れません。小中学校などでの歯磨き指導は、虫歯を対象にしているので、歯にのみブラシを当てることになり、歯ぐきには効果的にブラシが当たりません。やってみていただければすぐわかりますが、歯と同じように歯ぐきを歯ブラシでごしごしやると痛いのです。しかし、この感触は歯垢除去に重要で、歯磨き中にこの歯ぐきに当たる感触がなければ、歯ぐきにブラシが当たっていないことになるので、歯垢の除去は難しくなることになります。

歯ブラシにも注意が必要です。これは食器を洗うことを考えてみてもわかます。食洗器はもちろんのこと、手洗いによる食器洗いでも、ほぼ洗剤をこすりつけているだけです。これで、食器の油汚れは十分に落ちるほど、洗剤の洗浄力は高いのです。しかし、フライパンにこびりついた焼けこげは、この方法で落ちるでしょうか? 洗剤とナイロンたわしで、洗剤をこすりつけるだけでは落ちません。歯垢はこれと同じです。歯ブラシに歯磨き粉をつけて、表面を撫でても効果的ではなく、さらに、歯ブラシに軟らかすぎるものを使うと、強い力をかければ毛がねてしまい毛の先で掻き出すということができません。
では、硬めの歯ブラシで、歯と歯ぐきの境目をごしごしやれば良いかというと、これをやれば歯ぐきに炎症を起こし、歯の健康という点では逆効果になります。
つまり歯周病対策の歯磨きは、歯ぐきをこするが、炎症を作らない程度にほどほどにということになります。

そう考えると、どれだけやれば歯垢が取れるのかを確認することが必要になります。その確認に歯垢染色剤を使用することはこれまで述べたように不適当です。訓練を積んだ歯科衛生士ですら、歯垢の確認ができないのですから、素人には無理と言わざるを得えません。

歯垢は歯の色と似ているので見分けがつきにくいと言われていますが、白色LED 光を使い CCD カメラで撮影すると、歯垢だけが白く浮かび上がります。蛍光発光と波長分光特性の妙味なのですが、詳細な説明は省略します。この時の CCD カメラは、上図のようなおもちゃレベルで十分です。こういう、どちらかというと青白い白色光のほうが良いようです。ちなみにこれは秋葉原で約 1,200 円でした。自分の歯の裏側は鏡を使ってもみることが難しいので、LED 照明付きの超小型カメラはこの用途ではかなり有効です。この方法を使うと自分で歯の裏側の歯垢や歯石のチェックもできます。
なお、この原理による歯垢検査装置の開発は、蛍光を含む光学の専門的な知識が必要で、医者ベースでの研究はあまりうまくいっていないように思えます。歯科医院でも LED の照明が使われますが、演色性の良いLEDを使っているのと目視確認なので、CCDカメラのようには見えません。

余計な一言

若い女性の歯科衛生士から、上から目線でいろいろ言われ、口の中をいじられることを快感と感じる御仁であれば、PCRや歯磨き指導は至福の時間でしょう 。しかしこれは、もはや医療とは異なる世界です。
 

参考文献

1. O'Leary TJ, Drake RB, Naylor JE. The plaque control record. J Periodontol.  Jan;43(1):38.(1972)
 ネットでは有料ですが、下記で入手可能です。大学の図書館などで、無料閲覧できる場合があります。 
https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1902/jop.1972.43.1.38

2.  森山他著, O'Leary's Plaque Control Record における術者間の判定誤差について, 歯科学報 Vol. 93, No.5 (1993)
 こちらは下記で無料で閲覧できます。
http://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/2177/1/93_539.pdf

3.  IPCS INTERNATIONAL PROGRAMME ON CHEMICAL SAFETY Health and Safety Guide No. 107 HEXACHLOROBENZENE HEALTH AND SAFETY GUIDE 1998
google books で無料閲覧出来ますが、amazon 等でも古本を入手可能です。
https://books.google.co.jp/books?id=pcevJ0Dr0bUC

4. D&C Red No. 27 [CASRN 13473-26-2] D&C Red No. 28 [CASRN 18472-87-2]
https://ntp.niehs.nih.gov/ntp/htdocs/chem_background/exsumpdf/reddyes_508.pdf

5. 森田会計事務所 医業経営情報レポート 2018.08
http://www.morita-tax.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/r_i326.pdf

6) https://www2.ha-channel-88.com/soudann/soudann-00030192.html

7) 歯科衛生士国家試験対策検討会 編、歯科衛生士 国家試験対策D、p19 医歯薬出版株式会社

 

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